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クマムシ

2022/10/21

そのほか

こんにちは、にこにこスタッフ森田です。


生物を特集したテレビ番組などで、時々『クマムシ』を目にすることがあります。10年以上前に書籍がベストセラーとなり、現在ではぬいぐるみが販売されるなど、とても有名になりました。
形態は足が4対8本あり「緩歩動物」という分類に属しており、その姿形がクマに似ていることからクマムシと呼ばれています。
クマムシの仲間は1000種類以上が確認されています。近所の池や溝の苔など、都市部の身近な環境にも生息しているのですが、大きさが0.1~1㎜のため、普段の生活では目にすることはありません。
クマムシは世界中で生息しており、熱帯地方から南極・高山・海底などあらゆる地域で発見されています。
生態的特徴としては、呼吸器官は持っておらず、透過性のある体表にて酸素・二酸化炭素の交換をおこなっています。陸上に生息するクマムシも、基本は苔など水分が多い箇所で生活しており、水生動物的な側面が強いそうです。

このどこにでも生息している小さなクマムシが注目されるようになったきっかけは、その環境耐性の高さです。
クマムシは「乾眠」に入ることで、「クリプトビオシス」と呼ばれるほぼ無代謝状態になります。この乾眠状態では、代謝を止めるだけでなく、過酷な環境に対しての耐久性が格段に上がります。

生息環境の水分が減少し乾燥が進むと、自らを守るため体を収縮させ乾燥した状態のまま休眠に入るのですが、それが乾眠と呼ばれていますクマやリスなど冬眠する動物も、代謝を低下させることで長期間食物を摂らずに生存できますが、クマムシの乾眠ではほぼ仮死状態となっており、呼吸や代謝といった生命活動までもが停止します。
ところが、乾眠状態のクマムシに水分を与えると再び動き始めるそうです。冬眠は数か月程度ですが、30年前に乾眠状態に入ったクマムシに水分を与えると、再び動き出すことが確認されました。ほぼ代謝が止まっているとはいっても、30年も固まった状態では細胞や組織が壊れてしまいそうですが、水分を与えられ乾眠が解けた後は問題ない様子で、産卵もしたそうです。

乾眠が進むと、全体重に占める水分量は3%以下にまで低下するそうです。
ヒトの水分量は、体重に対して成人でおよそ60%、乳幼児は少し多く70%、反対に高齢者は少なく50%程度です。
体の水分はとても重要なため、夏場は熱中症や脱水症状に気をつけるよう、天気予報などで注意喚起されています。ヒトの場合は体重の5%の水分が失われると体全身に症状があらわれ、10%を超えるとけいれんなど危険な症状がみられます。更に20%失われると死亡につながります。つまりヒトの場合は、水分量が体重の50~40%を下回ると命の危険が生じます。

一方クマムシは、全体重の3%以下になっても生き延びることができますが、元々の水分量が少ない訳ではなく、通常は80%程の水分を有しています。本来はヒトより多い80%の水分量から、ほとんどの水分が失われ干からびた状態となっても、その後の生命活動に支障が生じないことはとても驚きです。
乾燥した削る前の鰹節の水分量は15%程度ですので、それを考えると、水分量が3%以下となったクマムシは相当な乾燥度合いになります。この話しを聞くと、「完全に乾燥させた煮干しを水につけると、再び泳ぎ出した」といったような感覚があります。
こういった、極度の乾燥に対する耐性が備わっているクマムシですが、実際はそれだけではありません。高温や超低温・放射線・真空・高圧など他の過酷な環境条件に対する耐性も秀でており、現在も様々な研究の対象となっています。

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