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クマムシ2

2022/10/28

そのほか

こんにちは、にこにこスタッフ森田です。


『クマムシ』は体の大きさはとても小さいのですが、顕微鏡で観察すると、ゆっくり動き回る様子がクマが歩く姿と似ており、それが名前の由来となったそうです。クマムシが注目されるようになった要因は、他の生物が死滅してしまう過酷な環境下に置かれても、長期間生き延びることができる特性を有している点にあります。

ただし通常の動いているクマムシには、そのような環境耐性はありません。
生息環境が乾燥した時に「乾眠」と呼ばれる仮死状態へと移行するのですが、この乾眠状態に入ることにより、過酷な環境条件に対する耐性が生まれます。字で示されている通り乾燥への耐性が上昇するのですが、それだけでなく以下のような環境に対する耐性も確認されています。

  • ・温度-水の沸点を超える150℃の高温から、マイナス250℃以下の超低温まで

  • ・圧力-真空状態(0気圧)から、地球のマントル内と同等の7万5000気圧まで

  • ・放射線-ヒトの致死量を遥かに超える、高線量の放射線の照射

  • ・電子レンジでの加熱に耐える(数分間)

  • 乾眠状態で30年以上冷凍されていたクマムシに水をかけると、乾眠が解け再び動き出した

海外では、複数のクマムシを実際に宇宙空間まで連れて行き、そこで実験をおこないました。乾眠状態のクマムシが10日間真空の宇宙空間にさらされたのですが、戻ってきたクマムシに水をかけると、再び動き始める個体が現れました。
一方、宇宙空間で太陽光を直接浴びる個体と遮る個体に分けて実験をおこなったところ、太陽光を直接浴びた個体は生存率が低くなりました。宇宙空間で10日間太陽光を直接受けることは、相当ダメージがあるようです。

乾眠状態となったクマムシは代謝や呼吸が止まることはわかっていたのですが、実際に空気が存在しない宇宙空間でも生き延びることが証明されました。
リスやクマの冬眠時も代謝は低下しますが、乾眠はまさに仮死状態です。ただし、代謝が完全に止まっている訳ではないそうです。代謝を極限まで抑えているため呼吸の必要がなくなりますが、それでもごく僅かに代謝活動が続いているため、水をかけることで再生できるようです。

2019年には、イスラエルの月探査機が月面着陸を計画していたのですが、失敗し墜落しました。その探査機には、実験用のクマムシが数千匹乗せられていました。もしかすると、現在も乾眠状態で生き延びているのでないかといった意見もありますが、墜落時の衝撃により死んでしまっている可能性が高いようです。

宇宙船を太陽系を抜け出し更に遠くまで飛行させる「スターライト計画」といった構想があります。まだ、実現のための技術は開発されていませんが、理論上は可能とされています。
地上から照射したレーザーを宇宙船の推進力とし、4光年離れた惑星を目指します。その宇宙船の速度を光速の30%まで加速させることで、4光年先の惑星に20年程でたどり着けると考えられています

現在、地球から最も離れた距離まで飛行している宇宙船(探査機)はボイジャー1号です。1977年に打ち上げられ、35年の年月を経て太陽系を抜け出しました。そして、現在もおよそ時速6万㎞の速度で飛び続けています。そのボイジャー1号が4光年先の惑星に到達するには、およそ8万年かかるそうです。
それを考えると、スターライト計画の宇宙船の速度はとてつもないスピードです。ただし宇宙船と言われていますが、そのサイズはスマートフォンくらいの大きさになるそうです。

まるでSF映画のような壮大なプロジェクトですが、この光速の30%の速度が出る宇宙船にクマムシを搭乗させることが検討されています。宇宙空間で生き延びた実績があるクマムシがここでも選ばれています。
最終的には、とてつもない速度で惑星に衝突しクマムシは死んでしまいますが、そこまでの過程を記録することが目的とされています(計画次第では更にその先も飛び続けるのかもしれません)
クマムシからすると大変迷惑な話ですが、それだけ環境耐性に優れた生物であることの表れだと思われます。


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