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クマムシ3
2022/11/11
そのほか
こんにちは、にこにこスタッフ森田です。
前回は『クマムシ』に備わっている高い環境耐性について書きました。地球上で生きていく上では過剰過ぎるほどの耐性能力を、進化の過程でどのように身に付けていったのか、まだよくわかっていないそうです。
クマムシがいつ地球上に誕生したのか、まだ正確な時期はわかっていませんが、現在確認されている最古の化石は、カンブリア紀の岩石から見つかりました。カンブリア紀はおよそ5億年前にあたります。アリの祖先がミツバチの祖先から枝分かれし誕生したのが1~2億年ほど前と考えられているのですが、それと比較してみても、クマムシの歴史はとても長いことがわかります。
地球という惑星が誕生してから大変長い期間を経て、地球上に微生物が誕生しました。それから再び長い期間の経過の中で多様な進化を遂げることで哺乳類が出現し、更に進化を続け人類の誕生につながりました。
地球の長い歴史の中では、様々な要因により地球規模の気象・環境変化が幾度も起きており、その影響から多くの生物が絶滅しています。その中でも、特に規模の大きな絶滅が5回起きていると考えられており「ビッグファイブ」と呼ばれています。
白亜紀に起きた恐竜の絶滅もビッグファイブに含まれており、恐竜と同時にそれ以外の地球上の多くの生物も死に絶えました。ビッグファイブでは、その当時の70~90%以上の地球上の生物が絶滅したのではないかと考えられており、その中でも最大のペルム紀末の大量絶滅では、地球上の90~95%の生物が死に絶えたとされています。
クマムシの化石が見つかっているカンブリア紀(約5億4200万年~4億8830万年前)は、ビッグファイブが起きた期間(約4億4400万年~6600万年前)より前の時代です。そうするとクマムシは、その5回の大量絶滅期に起きた地球規模の大規模な気象・環境変化の中を生き延びた可能性があります。
確かにクマムシの環境耐性は優れているのですが、ビッグファイブが起きた当時の地球環境は、生物が生息できるような状態ではなかったと考えられています。植物や微生物にとっても厳し過ぎる環境であったのですが、多細胞生物であるクマムシにとっては尚更です。
そのような状況を生き延びているクマムシは、不死身であるかのようにも思われますが、乾眠状態が解けるとそうでもないようです。
普段のクマムシは、藻類やコケ類・微生物などを餌としており、自然環境下での寿命は1か月~1年ほどです。通常の活動状態のクマムシは、37℃の温度下で24時間経過すると半数の個体が死んでしまったという研究結果があります。
乾眠状態では高温・高圧・放射線への耐性がありますが、それは短時間の実験であって、長時間さらされた場合には生存率の低下が確認されています。また、過酷な環境下にさらされたクマムシに水をかけると再び動き出しますが、実際そのクマムシがどれほどのダメージを受けているのかはよくわかっていません。
クマムシについては、まだ正確にはわかっていない点が多くあります。環境耐性の高さにはどのような生理的な仕組みが関係しているのか、それを解明しようと研究が進められています。
現在は、肉や魚など食材の保存・流通時は冷凍することが一般的です。冷凍保存には多くの電気が必要です。クマムシの乾眠の仕組みが解明されることで、もしかすると、食材を冷凍せずに保存することが可能になるかもしれません。