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精密栄養と腸内フローラ

2023/05/26

そのほか

こんにちは、京都の訪問マッサージにこにこスタッフの森田です。


「栄養学」においてこれまでおこなわれていた研究は、1種類の栄養素や食品を対象とすることが主でした。
例えば、レモンを毎日食べることによって表れる体の変化であったり、ビタミンCのサプリメントを摂取することにより表れる体への作用を調べていました。
しかし同量の食品・栄養素を摂取しているにもかかわらず、体への作用や影響に個人差が生じることがあります。そういった場合は、平均値や多数に表れている変化を調べることによって、その栄養素がもたらす作用が推定されます。
しかし、被験者が同期間同じ栄養素を摂取しているにもかかわらず、正反対の結果が表れた為に結論が出ない場合もあるようです。
そのため最近では、栄養素がもたらす作用や影響について、少し視点を変えて研究する『精密(プレシジョン)栄養』とよばれる分野が注目されています。

疾患の種類によっては、摂取カロリーや塩分量・必要な栄養素の分量など、個別の食事指導を受けます。しかし疾患がない人々への食事のアドバイスでは、平均的で大まかな内容が多いように思われます。
例えば「糖質を多量に取り続けると血糖値が上昇しますので、糖質を多く含む食品は食べ過ぎないように気をつけましょう。糖質は食事から摂取する一日の総カロリーの5065%が目安です」といった内容となります。
糖質の摂取量が増加すると血糖値は上昇しますので、摂取量には気をつける必要があり、現在までにわかっているデータから、目安としての5065%といった数値が示されています。ただし血糖値の上がり方には個人差があり、とくに運動量などを考慮すると、適正量には変動がみられると推察されます。
また、日々の食事の総カロリーから糖質量まで計算している一般人は少数であり、あまり実生活には浸透していないように思われます。

血糖値に限らず、体格や年齢・遺伝子・活動量・内臓の働きなど多くの要因が代謝に影響していると考えられているのですが、そういった要因との関係性を明確にし、一人一人に適した栄養/食事内容を調べているのが『精密栄養学』です。そしてAI技術やデジタル機器を活用し、一般人がより簡便に利用できるような形を目指しています。

『精密栄養学』では、多くの人々の様々なデータを集めることを目標としています。
年齢・性別・体格・血液の状態・既往歴・睡眠や運動などの生活習慣・遺伝子情報・腸内細菌の状態・食習慣や嗜好・季節など多岐にわたります。
全ての被験者に対し、これだけの多くの項目を調査するのは困難ですが、できるだけ多くの情報を集めているようです。
より確かで多彩なデータを集めることによって、結果的には一人一人に対応した適確な提案へとつながります。

これまでにも、摂取した栄養素の作用や働きに関与していると思われる要因は調べられています。
以前は遺伝的要因が大きいと思われていたのですが、近年わかってきた内容では、とくに腸内細菌叢(腸内フローラ)の影響が大きいようです。

腸内細菌叢と健康面との関わりについては、現在様々な研究がおこなわれ、多くの事実が発見されています。体重の増減にも腸内細菌が影響していることがわかっています。
また、腸内細菌は食物の消化に大きく関わっているため、栄養素の代謝にも影響していることが推測されます。
日本人は海藻を消化できますが、海外ではそうでない人が多いようです(日本人の中にも海藻を消化できない人はいます)。この海藻の消化においても腸内細菌が関係しています。
したがって日本人が海藻を食べることは栄養面でプラスとなりますが、消化できない人が食べた場合には栄養として吸収されませんので、栄養/食事指導としては適していません。
腸内細菌叢は海藻だけでなく様々な食品の代謝に関与している可能性があり、精密栄養学ではとくに考慮される要因だと考えられています。個人の腸内細菌叢を簡易に調べることができるようになると、より適確な栄養指導につながると思われます。

このような健康維持に対する新しい取り組みは、栄養面だけでなく運動の分野においても進められています。
「脂質異常症のかたはウォーキングなどの有酸素運動をおこないましょう」といったアドバイスではなく、より個人に適した具体的な運動プラン(運動内容、回数、強度、頻度、時間など)を提示できるのかもしれません。またこれからは、運動中の体の状態をリアルタイムで表示する様々なデジタル機器の活用が増えてくると思われます。


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