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カブトガニ
2021/02/05
そのほか
こんにちは、にこにこスタッフ森田です。
カブトガニという生き物の名前を聞いたことはありますでしょうか。
カニと名前についてはいますが、一般のカニとは外観は異なり、大きな昆虫のような感じで、見た目が苦手なかたもおられると思われます。
分類としては、カニの仲間ではなく、クモやサソリに近い生き物です。
恐竜がいた2億年以上前から、ほとんど進化せず、現在の姿のまま存在し続けており、生きた化石とよばれています。
単眼と複眼を合わせ、目が10個もあるのですが、あまり目がよくなく、海中を動き回り、肢に引っかかたプランクトンや微生物を食べているといった、謎の生き物です。
カブトガニの血液は青い血液と言われています。
人間は血液内にヘモグロビンというたんぱく質があり、その中には鉄が含まれ酸素を運ぶ役割をはたしています。
一方、カブトガニの血液には、ヘモグロビンの代わりにヘモシアニンといった物質があり、中には鉄ではなく銅が含まれています。
この銅が酸素と結びつくことで青い色になっているとのことです。確かに、銅が錆びてくると、青くなりますね。
カブトガニは、日本では瀬戸内海や北九州で生息していますが、生息地域の埋め立てや汚染により、数は激減しています。
一方、海外では生息数は日本よりはるかに多く、北アメリカでは、かなりの数が生息しています。
このカブトガニですが、医療において大変重要な役割を果たしているようです。
現在、世界各国で新型コロナウイルス感染症のワクチン、治療薬の研究、開発が進められています。
このワクチン生産の過程で、カブトガニが大きく関わっているとのことです。
ただし、カブトガニの成分は直接ワクチンの原材料とはなりません。
ワクチンや注射薬といった医療品、また人工関節など様々な医療機器は、完全に滅菌されている必要があります。
もし、細菌などが混入していると、場合によっては、それが原因で死にいたる可能性もあります。
そのため、生産の最終の段階で、細菌の混入がないか確認するのですが、その時に、カブトガニの血液から採取された成分より作られた試薬が用いられるそうです。
細菌にエンドトキシンという内毒素があり、このカブトガニの血液成分から生成された試薬が反応します。
エンドトキシンを検出できる唯一の天然の成分とのことです。
現在では、カブトガニ由来のものでない試薬もあるようですが、安全性の面で承認されていない国もあり、世界中の多くの製薬会社では、今もカブトガニの血液を必要としています。
そのため、毎年5月頃には、約50万匹のカブトガニを捕獲し、心臓付近の血管から血液を採取し、その後、海に返しているそうです。人の献血のような感じです。
しかし、この血液採取の工程はカブトガニの体に負担がかかっているようです。
以前は海に返した個体のうち数%は死亡すると考えられていたのですが、最近の調査では、実際は数十%の個体が死亡しているのでないかといわれています。
そうなるとカブトガニの数は減少していきます。
環境保全団体の調査では、この減少が渡り鳥にも影響するとのことです。
渡り鳥の中には、旅の途中のエサとして、カブトガニの卵を主食としているものがあり、近年のカブトガニの減少に伴い、渡り鳥の数も減少しているといわれています。
恐竜がいたはるか昔から、ほとんど姿を変えず生息するカブトガニが、現在の最先端の医療において、なくてはならない存在であることは本当に不思議なことです。
長い年月を進化が不要であるほどの、よくできた免疫システムを備えた生き物なのかもしれません。
しかし、数の減少も危惧されているため、カブトガニに頼らない試薬が早く開発されれば良いと思われます。